東京都新宿区のマンション地下駐車場で、作業員4人が死亡した消火設備の事故。
亡くなった上邨昇巨(うえむら・のりきよ)さん(59)=東京都足立区江北3丁目=と昌弘さん(58)=同区古千谷本町1丁目=は兄弟だった。16日午前、取材に応じた父勝治さん(86)は「つらいのひと言です」と話した。
兄弟で内装会社を切り盛りしていた。孫の顔を見せに来るなど、親孝行の息子たちだったという。
事故当時、2人は地下駐車場の天井の石膏(せっこう)ボードの張り替え作業に下請け業者として参加していたとみられる。
昇巨さんは勝治さんの隣家に暮らしていた。15日夕、いつも晩ご飯や飲み物を届けてくれる昇巨さんが現れないことをいぶかしんでいた。テレビで事故を知り、「巻き込まれたんじゃないか」という不安は的中した。
この日朝、昇巨さんは普段と同じように仕事前に顔を見せ、「元気か。行ってくるな」と言って出かけた。「気を付けてがんばれよ」と返したのが、最後の会話になった。勝治さんは「何とか元気でいてほしかった」と肩を落とした。(増山祐史)
「中にいる限り、身は守れない」
作業員4人が死亡する事故につながったのは、二酸化炭素を瞬間的に充満させて酸素濃度を下げ、火を消す設備だった。
ガスを活用する消火設備は、水での消火に向かない立体駐車場や通信機器室、電気室、ボイラー室の初期消火に有用とされ、東京消防庁によると、東京都内(稲城市と島しょ部を除く)の約3500棟の建物に設置されているという。
煙や熱を感知して作動する「自動式」の場合、作動からガスの噴射までは20秒ほど。緊急停止させるには、噴射する空間の外にある操作盤のスイッチを押す必要がある。複数の設備メーカーや業界団体の担当者は「噴射が始まれば、ガスが充満する場所にいる人はどうすることもできない。中にいる限り、身は守れない」と口をそろえる。
使い方を誤れば人命にかかわるような設備が普及しているのはなぜか。
自動式は人がいない場所にしか…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル